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特集

目指せ未来の星!
福島競馬場 乗馬スポーツ少年団

乗馬を通じて、次代のジョッキーや馬産業を支える人材を育ててきた福島競馬場の『乗馬スポーツ少年団』。練習には地元の高校生が参加するなどの特色もあり、2026年には新しい施設も完成しました。特集2では、少年団の1日に密着し、その活動内容を伺いました。

早朝から元気に集まる団員たち
自発的に声をかけ合い厩舎作業と馬装を行う団員たち

自発的に声をかけ合い厩舎作業と馬装を行う団員たち

土曜日の早朝、まだ暗い福島競馬場の乗馬センターに少年少女が続々と集まってきた。6時、厩舎の廊下で朝の挨拶と出席確認が行われる。この日の参加者は39名。確認が終わると、すぐに準備が始まった。下は小学5年生から上は高校3年生までが元気よく散らばり、馬房から馬を出して馬装を行う。空いた馬房はそれぞれ3、4人でテキパキと寝わらを換え、飼い葉桶を掃除する。職員が見守りながら子供たちが自分で判断して動き、経験の浅い年少者がまごついていれば声をかけて次の作業へ導く。2025年11月22日、福島記念が行われる日の朝の競馬場で、いつものように福島競馬場乗馬スポーツ少年団の活動が始まっていた。
JRA の競馬場は全場が乗馬センターを持ち、馬事公苑や東西のトレーニング・センターと同様に「乗馬の普及」や「馬の多様な活用」のために活動している。誘導馬の訓練などは後者。そして前者が、学校が休みの日の朝に行われる乗馬スポーツ少年団や、平日の午前中に行われる18歳以上を対象とした初心者乗馬クラスの指導だ。初心者乗馬クラスを終えた方のフォローアップクラスや、馬の世界で働きたい方向けのビギナーコースもある。民間の乗馬クラブなら必要な騎乗料や馬具のレンタル料などがなく、少年団費や保険料だけで指導を受けられることもあり、入団希望者は増え続けているという。少年団の練習は、開催のない日は8時半からだが、開催日はレース開始前に終わらせるため6時に始まる。夏も暑熱対策のため、やはり6時開始となっている。早朝からの活動に保護者の協力は欠かせない。自転車で来る団員もいるが、車での送り迎えも多い。現在、最も遠くから通う団員は郡山のさらに南の西郷村からで、車で1時間半はかかるという。

皆で準備をして、皆で練習に励む
グループ別に練習が始まる。ポニーもパートナーとなる

グループ別に練習が始まる。ポニーもパートナーとなる

グループ別に練習が始まる。ポニーもパートナーとなる

準備が済むと、出走予定馬の朝の調教が終わるのを待ち、7時過ぎにコース内側の専用馬場へ移動し、練習が始まった。福島競馬場乗馬センターの馬は17頭。観賞用のミニチュアホースが2頭で、乗用馬はサラブレッド12頭、外産乗軽種2頭、ポニー1頭(すべて取材日現在)。この中には福島記念や七夕賞を勝ったクレッシェンドラヴ、吾妻小富士S連覇のブラックアーメットといった福島競馬場にゆかりの深い誘導馬もいて、少年団の練習にも使われる。
この日、乗られるのはポニーを含む7頭。練習は列になって馬場を周回し、指導者の号令で左右に曲がったり、速歩や駈歩、常歩を切り替える「部班運動」で進められる。乗っていない団員は見学しながら適宜、ボロ拾いやレーキでの馬場ならし。約20分で最初の組が終わると、次の7名に乗り替わる。この日は全部で4組。組分けは大まかなレベルごとで、最初は高校生が多く、最後の組はまだ入団したばかりの小学生が中心になる。
少年団とは別に、隣の馬場ではJRA が早期人材養成の一環で募集し、競馬学校騎手課程受験を前提とした「JRAジュニアユース」メンバーや、試合を控えた福島県馬術連盟の強化指定選手なども練習をしている。
それらの指導は、少年団を含め、福島競馬場の職員4名と嘱託2名が行う。競馬場の他、トレセンや馬事公苑、競馬学校、育成牧場などJRAの各施設で働く「馬取扱技能職」の職員で、転勤もある。団員たちからは「先生」と呼ばれている。

練習にはJRAジュニアユースメンバーほか、県の強化指定選手、高校馬術部の生徒も参加する

目指すはトップジョッキー
『ジョッキーベイビーズ決勝大会(2025 年)』で2着に入った岡崎絢心さん。憧れの騎手はC.ルメール騎手だ

『ジョッキーベイビーズ決勝大会(2025 年)』で2着に入った岡崎絢心さん。憧れの騎手はC.ルメール騎手だ

近年、この少年団からは土田真翔騎手や遠藤汰月騎手らのJRA ジョッキーが誕生している。遠藤騎手は競馬学校の受験で不合格となり、福島東稜高校に進学。馬術部に所属しながら引き続き少年団の団員として指導を受け、翌年、合格した。地元の高校馬術部と乗馬センターの関係は古く、現在は福島東稜高校のほかに福島商業高校の馬術部員が、平日の放課後にここの馬を使って職員の指導を受けている。
中学1年生の団員、岡崎絢心さんも騎手を目指す一人で、2025 年の『ジョッキーベイビーズ』では東北・新潟地区代表として東京競馬場の決勝大会で2着となった。父がノーザンファーム天栄で働いており、馬には小さな頃から乗っている。「憧れの騎手はクリストフ・ルメール騎手です。馬の上で静かに乗るところがかっこいいと思います」とまっすぐ前を見て話してくれた。

技術とともに人間性も磨かれる場として

騎手だけではなく、高校3年生の団員は毎年数名が大学の馬術部や牧場、乗馬関係、JRA 関連施設など馬の世界へ進む。2026 年卒業予定の土田若葉さんも、JRA 馬取扱技能職に内定している一人。なんと兄は土田真翔ジョッキーだ。「最初は私も騎手を目指していたんですけど、先生たちを見ていて、私もこうなりたいと思うようになりました」
じつは土田さんの先生の一人である浅野拓哉職員も福島少年団の出身で、20年ほど前の卒業生だ。「三乗七厩」、厩舎作業などの「七」を大事にし、自主性を育む指導を意識しているという浅野職員。「彼らの活動も、馬あってこそです。馬主協会の皆様には、ぜひ少年団をはじめとした乗馬センターの役割にご理解、ご協力をいただければありがたいです」
8時半に練習が終わると、馬と団員は厩舎へ戻り、入れ替わりに馬場にはハロー車が入ってくる。馬を洗い、手入れをする団員たち。いっぽうで先生は、今度は「職員」として開催業務の準備を慌ただしく進める。
8時40分、開門。浅野職員も赤い乗馬服に身を包み、さっきまで団員を乗せていた誘導馬のクレッシェンドラヴに跨ってお客様のお出迎えへと出ていく。そして9時、団員たちは再び厩舎の廊下で挨拶を行い、この日は終了となった。

土田若葉さんは少年団で培った経験を胸にJRA 職員としてのスタートを切る

「社会に出ると自己判断の連続になります。乗馬をきっかけとして、自ら考え、それを表現できる子たちに育ってほしい」と熱い想いを語る浅野拓哉職員

新たな施設とともに未来へ

この後、2026 年1月には新しい乗馬センターがオープンした。ウォーキングマシンや屋根のある覆馬場を備え、馬にも、そして団員たちにも優しい施設となった。
若者が馬と触れ合い、馬産業へ人材を送り出す場所として―――
福島競馬場乗馬スポーツ少年団の活動は、これからも続く。

2026 年に完成した新乗馬センター。最新鋭のウォーキングマシンのほか、屋根付きの馬場ができ、雪や悪天候の中でも練習が可能となった。

【少年団OB】2年目の飛躍を誓う 遠藤汰月騎手

遠藤汰月騎手

福島競馬場のターフを夢見て、毎日必死に自転車を漕ぎ続けた少年がいた。地元・福島出身の遠藤汰月だ。デビューから約1年、2025年に挙げた全5勝のうち4勝を故郷・福島で記録している期待の星が、挫折を乗り越えた少年団時代のエピソードと、次なる目標を語ってくれた。
騎手への第一歩は、競馬好きの両親の勧めで入団した「福島競馬場乗馬スポーツ少年団」だった。「そこでだんだんと競馬にハマっていき、騎手を目指すようになりました」と遠藤は振り返る。しかし、プロへの門は狭く、競馬学校の試験には一度不合格となる憂き目に遭う。それでも「諦めきれないものがあった」と地元の高校に通いながらの再挑戦を決意した。
その浪人生活、彼の心は常に競馬場にあった。「もう騎手になるためだけの1年間だと思っていたので、遊びには一切行きませんでした。まさに馬三昧の日々を過ごしていましたね」
自宅から競馬場までは車で10分ほどの距離だが、その道のりを自転車で放課後や休日は欠かさず通い詰めた。「週1日の休みを除けば、ずっと競馬場に行って馬に乗っていました」
一途な思いが実を結び、二度目の試験で見事合格。少年団で培った経験は、競馬学校でも大きな武器となった。「馬に乗っていたことによって、体幹も鍛えられていましたし、学校でも乗馬に関しては特に問題はなかったので、少年団での経験が生きたのだと思います」
晴れてJRAの騎手としてデビューした遠藤騎手のポテンシャルを感じさせたのが2025 年6月29日に福島で行われた新馬戦、ハッピーエンジェルとのコンビで臨んだ一戦だ。序盤から急かすこと無く冷静にエスコートし、勝利へと導いたのだ。「ゲート試験から乗せて頂いていて、これは絶対勝てると自信がありました。人気になりそうな相手もいましたが、その調教動画も見て『勝てるな』と思っていました」と振り返るが、この分析力と強心臓を併せ持つ20歳は周囲を驚かせる存在となっている。
地元での勝利に「地元愛が溢れて嬉しかった」と頬を緩める一方で、「やっぱり中山とか東京でもっと勝ちたいという思いもあります」と本音も覗かせる。
今年の個人的な目標は「30勝以上はできるように毎日日々努力を怠らず、調教も競馬も頑張っていきたい」。そして騎手を夢見る少年団の後輩たちへは「楽しく、安全に怪我なく乗って、諦めなければいつか受かる。未来は明るいと思います」とエールを送る。福島の星から中央の主役へ、遠藤汰月の挑戦はここから加速していく。

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