特集
福島馬主協会公益目的助成事業リポート
本会では、公益目的助成事業として福島市内の「子ども食堂」へ支援を行ってまいりました。
助成金が実際にどのように活かされているのかを改めて知るため、坂田行夫社会貢献・広報委員会委員長、加藤裕司同委員とともに2ヶ所の「子ども食堂」を訪れました。
◆支援の「その先」にある笑顔
2025 年12月17日、福島市内は凛と冷えていましたが、子ども食堂の集会場には寒さを忘れさせるほどの温もりと笑い声が広がっていました。玄関先では、地域のおばあちゃんたちが口々に「はい、おかえりー!」と子どもたちを出迎えます。その一言で、子どもたちはまるで自分の居場所に帰ってきたかのような表情を見せていました。
福島馬主協会が2022 年から独自の公益目的助成事業として取り組んできた「子ども食堂」への運営支援は、今年で4年目を迎え、2025年度の支援総額は700 万円を超えて各団体へと届けられています。
今回、私たちは、その支援が地域の現場でどのように活かされているのかを確かめるため、福島市内にある二つの子ども食堂を視察しました。訪れたのは、坂田行夫社会貢献・広報委員会委員長、加藤裕司同委員、そして筆者の三人です。
訪問先① とりかわバァちゃんち
◆放課後の喧騒が教えてくれること
ランドセルを背負った子どもたちが、一目散に集会所へと駆け込む姿。まるで登校風景のように賑やか… …いや、正直うるさいほどです。月に1度、集まる子どもは120人ほどで、想定を上回る参加人数だといいます。配られたピザをほおばる子がいる一方で、机に向かい熱心に宿題をする子たちも多く見られました。
食事や遊び以上に、この場所が〝楽しみな時間〟になっていることが、子どもたちの言葉から伝わってきます。
「毎月、この日が来るの、すっごく楽しみ。他の学校の子とか年上の中学生も来るよ」「もしこの日に風邪をひいちゃったら、絶望ですよ」
「どんな家庭の子もみんな同じ地域の子です」と語るとりかわバァちゃんち・半澤敦子代表
◆「誰でも来られる場所」であるために
こうして見ていると、どの子が生活に困っているのかは分かりません。とりかわバァちゃんちの半澤敦子代表は、子どもたちにレッテルを貼りたくないと話します。「家庭環境が分かるような形には、あえてしません。それを前面に出してしまうと、子どもは来づらくなり、親御さんも引け目を感じてしまいます。ここでは、どんな家庭の子もみんな同じ地域の子です。食事についても特別な献立は作っていません。おにぎりと味噌汁だったら何人でも対応できる。だから誰でも来られる今の形を守りたいんです」
◆日常に寄り添う、民生委員としての関わり
半澤代表は、民生委員として日頃から地域の家庭事情に目を配っています。「学校に行かないんです」と相談するお母さんがいれば、子どもを畑に連れ出し、大根を抜いたり白菜を収穫したりしながら、何気ない会話で子どもの様子を伺ったりすることもあるそうです。
◆助成金が形になった「卒業祝い」
「長く通ってくれた子たちが小学校を卒業します。中学校で使う指定のT シャツって2枚も3枚も必要で、1枚3180 円するのです。せめて1枚を卒業祝いとして贈ってあげようということで、皆様のお金を使わせていただくことになりました。」
単なる衣類というよりも、子どもたちの新しい一歩をそっと後押しするための贈り物。助成金は、そんな現場の判断と気遣いを支える形で使われています。
子どもたちと地域の大人が自然に関わる様子を見て、抱いた感慨を口にしたのが、加藤裕司社会貢献・広報委員でした。
【加藤裕司 社会貢献・広報委員】
「私は福島で生まれ育ちましたが、昔はもっと近所付き合いが濃く、誰の家の子か分かるような環境でした。でも今は、福島でも核家族化が進み、共働き家庭が増えています。今日ここに来て、地域の大人が子どもたちを温かく迎えている姿を見て、改めて大切な場所だと感じました。現場の方とお話しする中で印象に残ったのが、活動を続ける上では『まとまったお金が一番助かる』という言葉です。少額ずつだと使い道が限られてしまいますが、ある程度まとまった支援であれば、結果として各現場に公平に行き渡り、必要なところにしっかり使ってもらえる。そうした支援のあり方も重要だと感じました」
訪問先② FOUR’S STUDIO
◆灯りの下に集う、世代をつなぐ食卓
夜になり、私たちは次なる視察先、FOUR’S STUDIOへと向かいました。スーパーの2階にある、明るく開放的なスペースには、まるで誕生日会のような華やかな空気が流れています。
奥のキッチンでは、数名の大人たちが手際よく調理を進めていました。市の職員が有給を取ったり、地元のパティシエがボランティアで参加したりして、色鮮やかなカップケーキや温かいシチューがテーブルを彩ります。その準備をテキパキと手伝っているのは、地元の高校生や大学生といった若いボランティアたちでした。
「最初は大学の先輩の誘いで『ちょっとついて行こうかな』という軽い気持ちでした。でも、一度来てみると子どもたちが本当に可愛くて」「小学生たちが『あ、お姉ちゃん来た!』と駆け寄ってきてくれるんです。それがすごく嬉しくて。この日をモチベーションに他のことも頑張れるくらいです」
「ボランティアというより、自分の居場所にもなっています。先輩に就活の悩みを聞いてもらうこともあるし、元気をもらいに来ている感覚です」
◆母を笑顔にする「月に一度のリフレッシュ」
賑やかな空間の片隅で、ゆっくりとお茶を飲むお母さん2人組。この時間が、日々の生活の中でどれほどの支えになっているのか、その想いを聞くことができました。
「下の子が発達障害で、主人は単身赴任。生活が忙しい毎日を過ごしています。月に1回でも、こうして親がリフレッシュさせてもらいながら、子どもは地域の学生さんと関係を築けて、美味しいものも食べさせてもらえる。ありがたいなと思います」
「福島市子ども食堂NET」代表で、いくつもの子ども食堂の運営をサポートしている江藤大裕氏
◆ネットワークを支える「福島のリーダー」
この活気ある現場を支えているのが、一般社団法人CARNIVALWORKS の代表者である江藤大裕さんです。江藤さんは福島市子ども食堂NET の代表者でもあり、各拠点をつなぐネットワークの要として、福島市内の支援の輪を広げてきました。
「地域づくりの間口は、できるだけ広くしておきたいと考えています。まずは、誰もが楽しく過ごせる場所であること。その中で、金銭的、あるいは育児の面で困っている親子が見えてきたら、食材支援や相談など、別の形でサポートをしていきます。もともと引きこもり支援に関わってきた中で、大人が多い地域でも、子どもたちが見過ごされてしまう現実を見てきました。そうした状況を防ぐ意味でも、このコミュニティーを大切にしたいと思っています」
今では支援を受けていたお母さんが、今度は支える側に回ってくれることもあるそうです。こうした現場の様子を前に、支援する側として坂田行夫社会貢献・広報委員長が想いを語りました。
【坂田行夫 社会貢献・広報委員長】
「学生たちがこれほど主体的に関わっているとは、正直驚きました。我々が拠出している助成金が、具体的にどういう形で子どもたちの笑顔に変わっているのかを直接見られて、本当に嬉しいです。お金を出すことは一つの形ですが、それをこうして現場の熱量に変えていく皆さんの努力には頭が下がります。この活動が10年、20年と続く基盤を、我々も一緒に作っていきたいと決意を新たにしました」
「貧困」のイメージから「地域みんなの居場所」へ
今回訪れた二つの子ども食堂には、支援という言葉だけでは語れない、いくつもの循環が生まれていました。
助成金は、活動を支える大切な土台です。しかし、それが本当の力を持つのは、地域の人が子どもと向き合い、日々の関わりの中で思いを重ねていくからこそだと、改めて実感しました。