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特集

特別座談会
勝見浩二福島競馬場場長をお迎えして

今回は勝見浩二福島競馬場場長をお迎えして、本会会長と広報委員会を交えて座談会を行った。
福島の印象、今後の競馬を盛り上げるための取り組み、抱負などを伺った。

半澤一磨本会広報委員(後列左) 宮川純造本会広報委員長(後列右) 伊東純一本会会長(前列左) 勝見浩二福島競馬場場長(前列右)

他の地域には類がない行政と近隣の理解がある

宮川純造本会広報委員長(以下、宮川

まずは、場長に赴任してからの福島競馬の印象をお聞かせください。

勝見浩二福島競馬場場長(以下、勝見

以前に開催の応援に来た頃も非常に過ごしやすい、温かみのある競馬場だと感じていました。実際にこちらに赴任してからは、いろいろと昔の資料を見たり、関係者から話を聞くと、もともと市の繁栄のために官民一体となって競馬場を誘致したという歴史がわかりました。ですので、競馬に対して行政や近隣の理解が深い土地柄という印象を持ちました。

伊東純一本会会長(以下、伊東

それはやはり市の街中にあるという立地のせいでしょうね。例えば競馬そのものを知らない方がこちらに転勤されて、初めて競馬を覚えるという例が非常に多いんです。たとえば、銀行などにお勤めの方は競馬をやっていると言うと印象が悪い場合もありますが、こちらではそういうことはありません。朝のあいさつが「昨日儲かった?」というんですから(笑)。地域密着型競馬場とでも言えますかね。

勝見

それはわたしも感じますね。福島でタクシーに乗って競馬場周辺を通ると、運転手さんが世間話のように「もうすぐ競馬開催が始まりますね」と親しみを込めて話しかけてきます。そういった土地柄であると感じます。

半澤一磨本会広報委員(以下、半澤

タクシーの運転手さんの中にも馬券を買っている方は多いですよね。助手席に競馬新聞を置いているのをよく見ますから(笑)。

宮川

場長は他の競馬場にも行かれていると思いますが、他の地域とはやはりそのあたりは違いますか?

勝見

やはり地域によっては受け入れてくれること自体が難しい場合もあります。競馬場近隣には土日になると周辺の道が混んだり、人が多く集まることで街がちらかったりと不満を感じてる方がいるものなのです。もちろん協力的な方もいらっしゃいますが、そういったことを必ず言われるものなんです。福島ではそういったことがほとんど聞かれませんね。

宮川

福島といえば、2011年の東日本大震災で大きな被害を受けましたが、こちらに来られてからその影響を感じられることはありますか?

勝見

赴任してから1年ほど経ちますが、競馬を開催するにあたっても、街を歩いていたりしてもほぼ感じられませんね。2016年の開催では一日の平均来場者数が初めて震災前を上回りました。お客さんも戻ってきていただけている印象を持っています。

半澤

我々も福島市内にいる限りは震災の影響を感じなくなりましたね。

勝見

もちろんいまだに避難されて不自由な生活を強いられている方がいらっしゃるということは承知していますが、福島市内ということになればそうでしょうね。

半澤

馬主協会では毎年、避難されている方を競馬場に招待するという活動を続けています。

伊東

中には初めて競馬をするという方もいらっしゃって、競馬というものがこんなにも素晴らしいものなのかと認識していただく場合もあります。広報活動の一環ともいえるかもしれませんが、わたくしどもとしては仮設住宅で不自由な暮らしをされている方に、一日でもいいからリラックスして楽しんでいただきたいという思いもあります。少額でも馬券を買って当たると非常に喜んでいる方もいらっしゃいます。

半澤

馬しかいませんけど、動物に癒やされるということもあるかもしれませんね。

伊東

避難されている地域の役場にご案内を出して参加者を募っているのですが、30人、40人はすぐに集まりますよ。お食事はこちらで提供させていただいています。競馬会からはバスの駐車場の確保や来賓席の提供などの形でご協力をいただいております。また、被災者の方だけではなく老人ホームの方をご招待することも始めました。やはりわたしたちは馬を走らせるだけでなく、地域の方に如何にして還元できるかということも考えなければいけないと思います。

半澤

遊園地の遠足などで競馬場を利用していただく場合もありますよね。

勝見

はい。今でもそれは行っています。そういった時にはポニーを出したりもしています。内馬場にちょっとした遊具もありますしね。小さい頃に競馬場や馬と触れ合っていただくのは良いことだと思います。

半澤

わたしも子供の頃に行ったことがあります。未来のお客さんになってくれる可能性もありますしね。

宮川

場長に就任されてから競馬を盛り上げるために取り組まれたことはございますか?

勝見

それにはまず、開催日に多くの人にご来場いただくことが一番です。新規のファンを掘り起こすにしても、既存のファンに改めて競馬の魅力を感じていただくにしても、ライブの場というのは非常に重視しています。そのためにはどうしたらいいのかを常に考えています。普段からチラシの配布やイベント展開など細かい周知活動は行ってきましたが、来年がちょうど福島競馬場開設100周年にあたります。それに合わせて、これまでとは違った記念になるような、また、お客様に還元できるようなことをこれから競馬場内で検討して、福島馬主協会様にもご協力いただきながら行っていきたいと思っております。

宮川

現存するJRAの競馬場の中では4番目に古い歴史がありますね。

勝見

昨年に函館競馬場が開設120周年を迎えまして、その頃にちょうど新幹線が函館まで開通しました。福島と函館が新幹線一本で結ばれたということで、函館競馬場と協力しあって宣伝していきましょうというお話をしました。

半澤

そういえば、そんな繋がりで昨年は馬主協会の役員会を函館競馬場で行ったこともありましたね。

伊東

100周年に関しては競馬会の方でも色々考えていらっしゃると思いますので、馬主協会としても全面的に協力したいですね。

宮川

重賞のひとつでも増やしてもらえませんかね(笑)。

(一同笑)

伊東

福島ではGⅢまでしか行われていませんが、私は再三福島にGⅡをと働きかけているのですが、なかなか実現しません(苦笑)。福島競馬場は街中にあってアクセスが良い。こんなに立地条件が恵まれているんですからあとは番組編成だと思いますよ。

半澤

やはり、競馬を盛り上げるためには競走馬の質とジョッキーの質の高さも必要ですね。

勝見

そういう面はやはりあるでしょうね。

半澤

去年は久しぶりの女性騎手である藤田菜七子騎手が誕生しましたが、福島に乗りに来たときには観客も増えましたよね。福島でJRA初勝利を挙げましたし、彼女が観客増員に貢献した面はあるんじゃないですか。競馬は知らないけど、藤田菜七子騎手は知っているという方もいますし。

伊東

昨年の競馬シーンは、前半は藤田菜七子騎手で、後半はキタサンブラックの北島オーナーで盛り上がりましたね。

半澤

そういった話題があると競馬を知らない方も競馬に目を向けてくれるようになりますよね。

勝見

昨年までは福島競馬場にふなっしーを呼んだりしました。

宮川

今年はピコ太郎さんでどうでしょう(笑)。

(一同笑)

福島競馬場ならではの魅力、楽しみ方がある

伊東

昔は滞在競馬が普通で、夜になると暇になった厩務員さんたちが街に出て、飲み屋さんなんかでもお友達ができて、そのお友達が競馬場に応援に来るなんてこともあったんですよね。でも、そういうことが今はなくなってしまいました。

宮川

昔は本当にそういうことが多かったですよね。

勝見

ジョッキーの中にも滞在する方がいましたね。福島競馬場で調教もしていたわけですから。

伊東

調教師や厩務員の宿舎に差し入れをしてくれる人もいました。ふれ合いがありましたね。今の時代はすぐにトレセンへ帰ってしまいます。

勝見

今は滞在馬はいません。ゼロです。

宮川

いつからそうなったんですかね。

半澤

美浦トレセンができたあたりですか?

勝見

いえ、その後もしばらくは滞在する馬がいましたよ。昭和63年に滞在を前提に厩舎を全面改装しました。ですから90年代後半くらいまでですかね。

宮川

交通の便が良くなりすぎましたね。

伊東

日帰り客も多くなってから旅館なんかは昔に比べて不景気になったんじゃないでしょうか。

勝見

地域密着型として育ってきた福島競馬としては、何か新しいものも考えなければならない時代です。

伊東

それでもいまだに福島競馬が好きだというファンはいるんですよ。

勝見

夏開催では記者さんからホテルがなかなか取れないという話を聞きます。いまだに熱心なファンも多くいらっしゃいます。

伊東

福島の競馬は玄人肌でおもしろいという声もよく聞きます。

半澤

小回りで逃げ馬が有利と思われていますが、意外とそうでもなくて、福島競馬ならではの難しさやおもしろさというのはありますよね。

伊東

ジョッキーの駆け引きも他場で見られないものがあります。競馬場というのは様々な特徴があっていいと思うんです。それぞれの楽しみ方ができますから。

半澤

競馬場ごとに得意なジョッキーがいたりね。昔の福島でいうと増沢(末夫)さんがそうでしたけど。

勝見

中舘(英二)さんもそうでしたね。

半澤

田辺(裕信)騎手のようなご当地ジョッキーにもがんばってほしいですね。木幡(初広)騎手もそうですね。今年から3人目の息子さんもデビューして、彼らは茨城県出身になりますが、何か親子で出演してもらうようなイベントをやってもおもしろいかもしれません。また、ご当地ジョッキー限定レースなどもおもしろそうですね。福島出身だけでは足りないので福島から北の出身のジョッキーもお借りして、福島出身のジョッキーは負担重量を軽くして(笑)。

(一同笑)

開設100周年記念の行事を成功させたい

宮川

場長としてはこれから福島競馬を運営するにあたって、何か問題点などをお感じになりますか?

勝見

先ほども申しましたが、おかげさまで馬券の売り上げも回復し、震災前よりも入場者数が増えましたが、その伸び率がやや鈍化しているのは気がかりです。今の時代はネットなど様々なツールで馬券を買えますから仕方のない面もありますが、やはり競馬場に来ていただいて、初めて競馬のおもしろさを知ってもらったり、改めて競馬の魅力を感じていただければと思います。それが競馬場の役目でもありますから、今後の入場者数の維持というのは課題です。

伊東

新しい客層をいかに掴んでいくかですね。実は福島は全国でも珍しい福島競馬振興会という市が運営している組織があるんですよ。

勝見

そうですね。そこの会長というのは歴代、市長が務められています。馬主協会さまにも参加していただいていますが、福島競馬振興のために様々なご意見を頂戴しています。他では類を見ない組織です。

伊東

街ぐるみで応援していただけるというのはありがたいですね。そこの組織から予算を使って東京競馬場などで福島競馬と福島市の観光をアピールしてもらう活動もしています。

宮川

福島競馬場にはご当地グルメのブースなどをよくみかけますね。

勝見

福島は地酒も有名ですからジョッキープロデュースのお酒を売ったり、昨年はボジョレー・ヌーボの解禁日が開催期間と重なっていたのでイベントを行いました。福島競馬場として付加価値を高めるための施策ですね。福島開催の時だけではなくても、他の組織とタイアップして場所を提供することでお客さんに来ていただき、ついでに馬券も買っていただけると良いですね。

伊東

都内には各県のアンテナショップがいっぱいありますが、福島のお店で競馬開催のチラシを置いたりポスターを飾ってもらうのも良いかもしれません。

勝見

それは良いアイディアだと思います。一部では行っていますが、さらに広げていきたいですね。

半澤

お笑いイベントやキャラクターショーなどを競馬場で行えば、家族連れも来ますし、やはり効果は目に見えてありますよね。

伊東

福島は潜在的にいっぱい競馬ファンがいるんですから、もっともっと盛り上がってもいいはずなんですよ。ただ、編成的に重賞が前倒しになって最終日ではなくなったり、開催日が減らされたりするのは寂しいですね。

宮川

最後に場長からこの後の抱負をお聞かせください。

勝見

何度も申し上げましたが、やはり競馬ファンの掘り起こしを継続的に続けていくことですね。そして、来年の開設100周年のイベントを成功させたいと思います。

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